この記事では、マネジメント層の方にコーチングを提供することによって起きた変化を、コーチである私、栢原の視点からご紹介します。
ご依頼主は、株式会社小冨士製作所。
経営管理室の寺田さんから「社内の雰囲気を変えたいから、マネジメント層の方にコーチングをしてほしい」というご相談でした。
コーチングセッションを始めて3ヶ月後には、ご依頼主である寺田さんから「始める前に期待していた以上の効果が現れた」と言っていただいた事例です。
- 社内の雰囲気を改善させる方法を知りたい方
- マネジメント層がコーチングを受けることで組織にどんな変化が起こるかを知りたい方
- 社内の雰囲気を改善させるために何をすれば良いかを知りたい方
目次
社内の雰囲気や職場環境が悪いとどうなる?
まず、社内の雰囲気や職場環境が悪いとどうなるかを見ておきましょう。
社内の雰囲気や職場環境が悪いと、従業員の士気が低下し、生産性や創造性が大幅に減少します。社員間のコミュニケーションが不足し、誤解や衝突が増え、チームワークが損なわれます。
また、働く人達のストレスは増加し、健康問題や高い離職率につながります。結果として、企業の業績が低下し、優秀な人材が競合他社に流れるリスクが高まります。
持続可能な成長を目指す企業にとって、良好な職場環境の維持は不可欠です。これを避けるためには、リーダーシップの強化や社員への適切なサポートが必要です。
社内の雰囲気や職場環境が悪い状態を放っておくと様々な問題が発生します。その改善を求めて、ご相談いただいたのが今回ご紹介する事例です。
社内の雰囲気を改善できるのはキーマンの成長
今回のご依頼は、経営企画室の寺田さんが「会社の雰囲気改善にコーチングが役立つのでは?」と思ってくださったことから始まりました。
私が担当させていただいたのは、生産現場(工場)で働く係長の菅原さんでした。「あれ?」と思った方もいるかもしれませんが、「係長」という立場は、社内で管理職と言えるほど上の役職ではありません。
ではなぜ、菅原さんが選任されたのか?
それは、寺田さんが「社内の雰囲気を変えたい!」と思った際に、「トップダウンで働きかえても難しい点があるため、ボトムアップで変えていきたい。そのためには、下から上に、良い意見を出せる人を育てる必要がある」と考えられたからです。
もともとの社内の雰囲気と理想の職場
私がご依頼を受けた時、小富士製作所さんは以下のような状況だと聞きました。
- ほかの人が困っていても協力し合えない
- 部署間でのコンフリクションが発生している
- 納期遅れが発生するなど管理も行き届いていない
対して理想としている職場は以下のような状況です。
- 部署を超えて協力し合える体制
- 良い意見交換ができる
- 社員が楽しく働けている
社内の雰囲気改善に向けてコーチングに期待されたこと
この状況に対して、係長である菅原さんにコーチングセッションをさせてもらうことで、以下のような結果が期待されていました。
- 菅原さんのモチベーションを上げる
- 菅原さんから良い雰囲気を出してムードメーカーになってほしい
目標の達成度合いが測りにくいため、寺田さんとは、何度も「どうなったらこの目標が達成できたと思いますか?」「目標が達成できたら何が変わりますか?」などを話し合いをしました。
セッションは、会社が何を期待しているのかを伝えつつ、まずは菅原さんが今の会社に対してどう感じているのか、菅原さんはどこを目指しているのか、といったことを聞きながら進めていきました。
実際に起きた社内の雰囲気の変化:劇的に良くなった!
結果、3ヶ月で大きな変化が訪れました。
3ヶ月で4回セッションを実施しましたが、私は3回目のセッションから菅原さんが成長しているのを感じていました。菅原さん自身も自分の成長を感じ取って喜んでくれていました。
ですが、今回のご依頼の目的は「菅原さんを成長させること」ではありません。菅原さんからのご依頼であれば、菅原さんが成長するだけでも十分なのですが、今回の本当の目的は「社内の雰囲気を良くすること」です。
コーチングセッションはリモートで実施させてもらっているため、本来の目的である社内の雰囲気は私からは変化が見られません。そこで、3ヶ月が過ぎたあたりで寺田さんに伺ったところ、「菅原さん、すごい成長したよね!目に見えて変わった!」と喜んでくださいました。
ここからはコーチングを実施することで何が起きたのかをご紹介します。
コーチングを受けたマネジメント職の社員に起きた変化
大きな変化は2つあります。
変化1:問題への対応策を考えられるようになった
大きな変化を感じ始めたのは2回目のセッションでした。セッションは「ショックなことがあった」と話をしてくださった所から始まりました。
一緒に「何が起きたのか」「それに対して何がショックだったのか」などを丁寧に見ていきました。
吹き出し:客観的な意見ですが、菅原さんがショックを受けていた出来事は、原因は菅原さん以外の所にあったと思うような出来事でした。
でも、菅原さんは「私にももっとできることがあったかも」と捉えており、「次に同じようなことが起きないためにどうすれば良いのか」を考えました。
その結果、「自分が商品についてもっと勉強すれば、手順についてもっと上手に教えられるようになると思うから、毎日15分勉強する」という具体的なアクションが決まりました。
次のセッションの振り返り時に結果を聞くと、「毎日15分、できました!」と嬉しそうに報告してくださったのを覚えています。
3回目に扱うテーマは「もっと自分の時間を作りたい」というものでした。生産工場のメンバーの指導にあたる時間が多いため、自分自身の仕事をする時間がとれていない、というお悩みでした。
「どうなると良いのか(理想の状態)」を考え、それを実現するためには「どうすれば良いのか(具体的行動)」を一緒に考えました。
結果として「マニュアルを作って手順を伝えることで、同じことを何度も伝えたりミスが発生するのを減らす」というアクションが決まりました。
次のセッションでは「まだまだ完璧ではないですが、作ってみて、メンバーのみんなの意見も聞きながら改善していっています」と言われていました。
変化2:課題・改善策も自分で見つける力がついた
この2回のセッションについて菅原さんと一緒に振り返りを行い、私の気づきをシェアしました。
「ここ直近の2回のセッションで、菅原さんは、自分で課題を発見して、理想像を考えて、そこにいくための具体的な行動を導いて改善する、というのができるようになっていますね」
この気づきを言葉にすることで、菅原さんから「ホントだ!感動です!」と言ってもらえたのは嬉しかったです。
菅原さんも「問題が起きた時に、何かを変えたいけれど、何を変えたら良いのか全然わからない状態だった。それが苦しかった。でも今は具体的な行動に変えていけていることが嬉しい」と語ってくださいました。
これを繰り返していくことで、菅原さんには「課題発見〜改善に向けた行動」の一連の流れが習慣化されていくのを今は狙っています。
目の前の課題を解決しつつも、クライアントさんの人としての成長につながることを考えながらセッションを設計しています。
コーチングを受けたマネジメント層が社内に起こした良い影響
会社や組織、特に中小企業は上に立つ人の影響がとても大きいです。そのため、今回「係長」という立場の菅原さんにコーチングをさせてもらうことで、どこまで会社や社内に影響を及ぼせるのか、というのは若干不安がありました。
ですが結果的に、菅原さんは社内の雰囲気を改善していることがわかりました。菅原さんが社内に起こした影響はこちらです。
影響1:協力してくれる人が増えた
「私の活動に協力してくれる人が増えた気がする」
これは菅原さんが言われていた言葉です。
菅原さん自身が変わろうとしているので、その姿を見て感化された人たちがいることの現れです。
菅原さんのチームメンバーの方の立場になって考えると、上司(菅原さん)が商品について勉強し手順書を作成したことにより、説明がわかりやすくなり何度も見返せる資料が手元に来た、というのは安心できるし効率も上がります。
その手間をかけてくれた上司への感謝の気持ちも湧いてきますよね。
一つひとつは些細なことかもしれませんが、そういった変化が周りに影響して社内の雰囲気や環境は作られていくものです。
コーチングのご依頼をいただいていた目的が「みんなが協力し合える職場になってほしい」というものだったので、この言葉を聞いてほっとしました。
影響2:職場環境が改善された
職場環境の改善には様々な種類がありますが、今回目に見えてわかったのは、整理整頓の徹底や資材の管理の徹底です。
整理整頓は仕事をするうえでの基本ではありますが、ものが散らかっている職場は実は多いものです。過去に私がお邪魔したことがある会社でも、段ボール箱が丸見えになっていたり、ものが散らかっている職場はたくさんありました。
でも、みんなが協力し合える職場だと、整理整頓ができ整っている状態が維持されています。
寺田さんが「前よりも整理整頓されて、ラベルも貼られて仕事が進みやすい環境になった!」と嬉しそうに言ってくださいました。
社内の雰囲気の改善がうまくいった理由3つ
今回、係長という立場の菅原さんへのコーチングの提供により、菅原さんがムードメーカーとなり社内の雰囲気を変えていきました。ただ、「誰でもこれが起きたのか?」というと、そんなことはありません。そこで、今回コーチングが効果を発揮できた理由を考えてみました。
うまくいった理由を3つ、ご紹介します。
理由1:本人の成長意欲が高かった
1つ目は、菅原さんがもともと会社への貢献欲も高く成長意欲もある方だった点です。
問題が起きた際に、決して他責にすることなく「自分が変わることで、もう同じことが起きないようにしたい」と言える考え方をされていました。
「本人が変わりたい、成長したい」と思っていること。これはコーチングの効果を発揮する上でも重要な要素の1つです。もちろん、「私は変わりたくない」と思っている方にコーチングをさせてもらい、少しずつ変化を起こしていくことは不可能ではありません。
ですが、会社のお金を投資して社員を育てる、敷いては社内の雰囲気を変えたいと考えるのであれば、「成長意欲の高い方」「もともと社内の影響力の高い方(通常であればマネジメント層)」を選ぶことをオススメします。
理由2:コーチとの約束の実行率が高かった
2つ目は、菅原さんの行動の実行率が高かったことです。
コーチングでは毎回セッションの最後に、次回のセッションまでに何をするか、の行動を約束します。菅原さんは毎回きっちりと実行してきてくれます。
「毎日15分勉強します」と言った時にも、「資料を作ってみます」と言った時にも、「なんとかできました!」と報告してくださるので、行動を起こした結果を聞くのが私も楽しみになっています。
コーチングでは、約束の行動を決めた後、「この行動をするにあたり、何かハードルになりそうなものはありませんか?」と聞いて、行動の実行しやすさを一緒に確認しています。
有言実行できるのも、菅原さんの魅力の1つです。その姿を見ている社内の周りの人たちからの信頼も厚いことと思います。
理由3:会社が求める姿を明確にしながら進めた
最後は、寺田さんと何度も話をし、会社が菅原さんに求める姿を明確にしながら進められた点です。
コーチングでは、クライアント(菅原さん)を誘導することはありません。会社が「こうなってほしい」と考えていても、コーチングではその姿を菅原さんに強要することはありません。
ただ、求める姿を明確にし、必要であれば会社が求めていることを菅原さんにお伝えすることもあります。伝えることにより、菅原さんのモチベーションが上がったり意識が変わる可能性があると考えた場合のみ、お伝えさせてもらっています。
今回は、コーチングセッションを通して菅原さんとコーチである私との間に、信頼関係ができていたからこそ、求める姿を伝えたことが効果的に働きました。
もちろん、事前に寺田さんの許可は得ています。許可を得たからといって必ず伝えるわけではなく、必要であれば伝えるスタンスでいます。
以上の3つの要因があったこともあり、今回のご依頼が良い成果を発揮しました。
社内の雰囲気が劇的に改善したコーチングのまとめ
今回は、マネジメント層の方にコーチングセッションを受けていただくことで、社内の雰囲気や環境が改善された事例をご紹介しました。
菅原さんにはコーチングセッションを受けていただいたのみですが、今後は必要に応じてコーチング手法についてもお伝えしていけたらと思っています。
人数や役職を問わず、部下がいらっしゃる方は、マネジメントが必要です。コーチングはマネジメントスキルの基礎力を上げてくれるので、マネジメント層の方にはぜひ学んでいただきたいスキルです。
でも、セッションを受けていただくだけでも、しかも管理職クラスの方じゃなくても、社内の雰囲気や環境にこんなに変化が訪れたことは私も嬉しい驚きでした。
経営者向け・マネジメント層向けのコーチングセッションや、コーチング研修に興味をお持ちの方はお気軽にご相談ください。